第11話「平和な戦争」

 ル・ルデ会談から、およそ6カ月後。

 すっかり季節は氷エレメンタルが沸く頃だ。
 寒いと思ったらゲフィルストまで沸いており、出逢いがしらのスペクトラルフローに凍死の恐怖を味わったわ。

 まあ、そんなゲームを知らないと分からないネタはさておき、ル・ルデ会談で決まったルールは前例が無いルールだったため、イレギュラーな事があちこちで起きた。
 それゆえ、時折、各国の責任者やお偉い方が集まり、細かいルール調整が行われていた。

 そんなある日、遂に私はオリジナル種族、メゥリリー族について世界に認識させることに成功した。

 たまたま各国首脳がそろい踏みの日があり、ちょこパママ団も参加していたのだ。
 そして議題や話題が途切れた隙にサッとメゥリリー族について紹介したのだ。

 検証の為に裸に剥かれたり魔法かけられたりと、いろいろあったが、存在が認められることは本当に助かった。これで隠し事をごまかす系のムーブをしなくて済む。
 ただ新聞のメゥリリー族紹介の記事にて、全裸の私の姿がデカデカと載ったせいで、周りの私を見る目が変な方向に変わったが誤算だったわ。
 見た目が美少女なので、事あるごとに擦られる。見た目がオッサンだったら三日も残らない話題だったろうに。
 気にしているムーブも気にしていないムーブもどっちも不自然なんだよなぁ。



 メゥリリー族が認識されたとなれば、次は問題は増やし方。

 メゥリリー族の子供はハーフにならず、純粋なメゥリリー族を出産となるのだから、私が人間の男なり女なりと交わって増やせばいいのだが、ハーレムとか作る気ないし、最初の世代を私一人が頑張るのはなんか嫌だ。
 魔法的なパワーでゲームっぽく増やせやしないかな。

 ※後年、式物の応用でメゥリリー族の初代の12人ほど作成することに成功するがそれは今物語では割愛。



 さて。
「ベルフリー・ルール」にて、戦争はかなり長引いている。

 普通の戦争ならば、兵士の数がどんどん減って行き決着がつくのだが、このルールでは死んでも一か月後には必ず生き返れる保障がある。
 どれだけ戦っても兵士の数が変わらない戦争なのだ。

 もちろん首都以外を全占領されて首都が攻められたら死を覚悟するが、今のところ全占領までは至っていない。

 全占領に至らない理由は簡単。
 拠点に守備兵を配置する関係から、占領拠点が増えるほどに攻撃要員の兵士が減るからだ。

 拠点が1つなら、守備に必要な兵士を配置した後、残りの兵士すべてが攻撃に行けるが、拠点が増えれば増えるほど守備の為の兵士が使われ、敵拠点を潰せるほどの攻撃兵が用意できなくなるのだ。
 逆に敵側は拠点が無くなれば無くなるほどに守備兵が増えてゆく。

 首都への攻撃の条件が首都以外の全拠点占領なのだから、残り首都だけという場合、守備側はほぼ全軍、攻撃側は厳選された少数精鋭という形になる。

 どれだけ攻撃側の個人個人が強くとも、守備側は守備に必要な数で攻撃を抑え込み、その間に別動隊でどこぞの拠点を落とせばいい。
 それで全拠点占領の条件が外れるので、攻撃側は撤退だ。

 どうしても首都を落としたければ兵士の復活しない一か月以内の電撃戦をするしかない。
 しかし魔法があるとは言え、中世の装備の世界で、首都以外の拠点を一か月で全部周るのは不可能だ。なんなら準備と移動だけで一か月過ぎる。

 というか兵士の復活しない一か月を狙うというのは、攻撃側が十分な数の兵士が生き残ってて、守備側が守れないほどに兵士が減っているという条件なのだから、その形に持って行くのもそもそも難しい話だろう。



 一番戦争を終わらせることができる「民衆の厭戦ムード」が無くなってしまっているのも大きな理由と言える。
 ベルフリー・ルールでは非戦闘員に手を出さないことが徹底されているため、戦いがスポーツっぽくなってきてしまっている。

 民衆娯楽の刺激のあるスポーツ観戦。
 そんな感じだ。

 春の麗らかな日差しの下、レジャーシートのようなものを敷いて、人間と獣人がもちよった食事に酒でヤイヤイ言いながら戦いを囃し立てる。
 商売に目ざといゴブリンが軽食やお菓子を売り歩き、屋台も出ている。

 普通は消耗するばかりの戦争だが、今現在、武器の生産や食料の生産などやそのほかの様々な事で雇用が生まれ、経済が回り始めている。

 どっちが勝つかの賭け事まで行われており、それは両陣営とも黙認している。

 「これは獣人の方が勝つな! 獣人に1万ギル!」と、敵陣営に賭ける人間もいるのだから、憎しみなどは殆どないのではなかろうか。
 え? 獣人に賭けてオケラになったから憎んでいる? 知らんがな。

 戦っている兵士達も楽しんでいるように見える。

 戦場で一騎討ちとかあっても「お。なんだ、お前、もう復帰したのか。あれから一か月たってたか?」「前回は不覚をとったが、今回は負けん! かかってこいや!!」みたいなことが起きており、本当にスポーツ感覚だ。



 さて。
 私らちょこパママ団は、各拠点に兵站と傭兵を取りまとめる部隊として派遣されている。
 ちょこパママ団にも戦闘部隊があるのだが、そこに傭兵を入れる形だ。

 名目上はお菓子屋さんで、お菓子屋さんの護衛の傭兵を雇っているような感じな。

 今は、私は「タブナジア侯国」に来ている。
 ゲームではオープニングムービーで滅ぼされた国がこのタブナジア侯国と思われる。

 ゲームでは無くなってしまった国だが、この世界ではルール上、無くなることはないだろう。

 人間や獣人が入り混じったオーディエンスがヤイノヤイノ言いながら観戦している。

 敵軍がド派手な衣装で名乗りを上げて威勢のいいことを張り上げている。
 ステージ(?)は大盛り上がり。

 さて、私も名乗り上げて場を盛り上げるか。
 ただ、ちょこパママ団の団長が居ると、賭けのオッズが下がるから少し不評。

 チート能力持ちで、敵を圧倒する、人間側にとってありがたい存在になるはずが、スポーツとか賭けとかになると盛り下がる存在になるんだからオモテタントチガウ。

 まあ、悲壮感の中の救いの存在になるよりはマシなのかもしれないけどね。


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