第3話「もうそろそろカニ漁の季節ですね(笑顔)」

 大量にメープルシュガー、ククル豆、パママを仕入れて、「ちょこパママ」を売り出すことにした。
 ちょこパママとは、我々の世界で言うチョコレートバナナだ。

 どうしてこれにしたのかは別に特別な理由があった訳ではない。
 たまたま市場を見に行った時に来ていた飛空艇がカザムからのもので、バナナ……パママが目についたので、そのままの流れでちょこパママにしたのである。

 カザムと言えばゲームではここで初めて飛空艇を使うプレイヤーが多かった。
 ジュノからカザムへ向かう飛空艇だ。

 カザムというのは、南国の島みたいなものを想像してくれればだいたいあっている。
 エキゾチックで良い島だが、森林が入り組んでいてだいたい迷う。
 プレイヤーとしてはあんまりウロウロと歩き回りたくはない。レベリングは楽しかったけど。

 ジュノは巨大な橋の上に作られたような街で、このゲームの四大都市のひとつ。
 街並みは全体的に石材でつくられナーロッパ風だ。
 同じくナーロッパ風のサンドリア王国は、まだ地面が土などの自然な部分もあったが、ジュノの方は石の橋の上のため、ほぼほぼ人工物で出来ている。

 このジュノに到着するとFINAL FANTASY XIのプレイヤーとして一区切りつき、ここから出る飛空艇に乗って、ようやくゲームのスタートラインにつけたような気がする。

 そういえばジュノの代表者のカムラナートが大公になったらしい。
 カムラナートについては、この世界の偉い人の一人と思ってくれればそれでいい。
 金髪長髪の若い美形青年だ。

 私の記憶が正しければ、ゲームではカムラナートの叙爵が先で、その後に飛空艇が作られたハズだったけど、順番が前後しているんだなぁ。
 カムラナートって結構重要な立ち位置だった気がするけど、こんなに遅い叙爵で大丈夫かな?
 変に歴史がグチャグチャになったりしない?
 これがクリスタル戦争が起きなかった理由だったりする?

 まぁ遅いといってもゲームでの年表知らないから、どれくらい差があるかはわからないけれど。
 今年はC.E.859年らしい。



 カムラナートがジュノの大公に叙爵したという話を聞いたとき、既にちょこパママ屋を始めてから3か月が経過しており、店の方はイイ感じに軌道に乗っている。

 商売についての法律に、マネしちゃいけませんってのが無いので、ちょっと売れたらすぐに同じような店が出てくるかなって思っていたが、まだ3か月なので、だいたい様子見だ。
 オマケでちょろっとちょこパママを出すところはあったが、専門店はウチだけ。

 今のうちに、私の知っている甘味をあれこれ出して、盤石にしようと考えている。
 様子見連中が本格的に動き出した時には、スィーツ界の崩せぬ一角になっていましたーって感じで。

 ちょこパママとは違う方向のクレープやケーキなどで幅を広げていくか、ちょこパママの知名度を生かして、パママのタルトとか、バブルチョコのようなちょこパママ関連するような商品にするか。
 迷いどころである。



 ちょこパママ屋をやるにあたり、いろいろと決める事が発生した。

 単純に店長は誰だとかそういう話じゃなく、大きな組織づくりが必要となったのだ。
 販売班や事務班や保守班や、、、まあ、それは今は割愛しておこう。

 とりあえず、私が一人でちょこパママ売って大儲けーって思っていたら、軍隊でも組織するようなハメになったと思ってくれればそれでいい。

 その原因は、私にある。

 本来、私が目指すことをやるのであれば、「屋台で一人で細々とやります」と役所に申請し、その後、規模が大きくなるについれて、「これもやります」、「あれもやります」と「追加申請」をしていくのが正しいやりかただ。
 しかし、私は思ってしまった。

「何度も申請をするのはメンドクサイ」

と。

 日本ではやりたいことをいっぱい書いて提出するってのは普通にできたと思う。
 詳しい事は知らないけど、たぶん。
 なので、そのノリで最終的にやりたいことまで全部記入して申請。

 店舗にしたい、各街に支店も作りたい、販売、輸入、輸出、商品の製造、原材料の生産、設備保守、警備、流通、、、、教育や医療とかも記入したキガスル。

 書類に不備が無かったので、申請はすんなり通った。

 まだ申請の訂正が出来る段階の時は「普通にちょこパママを販売して、規模が大きくなってきたら、ちょっとずつ人員を増やしていけばいいじゃん?」と、完全に楽観視しており、ほとんど気にしていなかった。

 しかしそこに問題が起きた。「補助金」だ。

 なんと、どれにも補助金が出ちゃうのだ。
 しかも貰うだけの給付金型の。

 販売には販売の補助金。
 輸入には輸入の補助金。
 流通には流通の補助金。
 申請したもの全てに補助金が出るのだ。

 補助金を給付してもらっておいて、申請した仕事を一定期間やらなかった場合、国から呼び出されて「いろいろなお仕事」が強制で頂けるらしい。
 なるほど。そういう手口か。簡単に申請が通るわけだ。
「もうそろそろカニ漁の季節ですね」っと係員が笑顔でつぶやく。コワイ。こっちはカヨワイ女の子の見た目だというのに。

 ちなみに補助金の受け取り拒否はできない。

 あ、役所が詐欺しているような言い方してしまったけれど、役所は悪くないのよね。
 1つ1つ段階的に追加申請する形だったのなら問題無かった。
 一括で大量申請した私の落ち度だ。
 強制的な「お仕事」があるのも役所から補助金騙し取るやつを懲罰するためのものだし。



 とりあえず人を揃えて、なんとか形だけ整えた。

 本業の販売以外は人を雇って配置しただけというお粗末さではあるものの、なんとか出来た。お金の力ってすごいなぁ(呆)。

 もちろん補助金では全然足りない。そもそも「補助」のお金なので、足りなくて当然だが。
 そこで私は足りない分を国営の銀行に高額の融資を受けた。

 融資の担保は自分。
 有事の際に問答無用で徴兵されることとなる。

 当初は「融資が受けれないのでは?」という心配があったので、ひたすら自分が高レベルの黒魔であることをアピールした。
 やり過ぎた感はある。「なんかやっちゃいました?」のアレになっていたよ。

 おかげで高額の融資を受ける事には成功したものの、それのせいで徴兵時は後方支援とかじゃなくて最前線送り。決死隊のメンバーにも入れられたわ。
 融資はありがたいけれど、最前線じゃ文明的な生活はほぼほぼ無理だろう。
 お風呂も無いし、安眠もできないし、ご飯も非常食系だろうなぁ。

 いやだいやだ。メゥリリー族の身体だから、数日お風呂に入らなくても臭わないけれど、タマシイが毎日のお風呂を求めている。
 美味しい物食べて、お風呂でサッパリして、柔らかなお布団に包まって寝る。それが出来ないなんて。

 それに、いくら私が強くても、生き物殺したり、殺されそうになったりってホント嫌。
 戦争とか起きませんよーに。



 さて。

 気まぐれに作ったドーナツシリーズが好評で嬉しいところだけど、ちょこパママの売り上げを追い越すのはなんか違う気がしている。
 なんとか、テコ入れを考えないとなぁ。

 パママドーナッツうんまっ。

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