第7話「遥々とサンドリア」

 4月半ばの季節。
 日が昇り始めた薄暗い早朝。
 水分を含んだひんやりとした空気が木々の匂いと混ざってコーヒーのお供にとてもよく合う。

 普段ならばとても凪いだ時刻なのだろうけれど、重苦しい空気が支配していた。

 サンドリア王国の城門前。
 サンドリア王立騎士団のほぼ全軍が整列しており、声を発していないのに騒がしく感じる。

 一昨日の深夜にクリスタルと共にサンドリアの城門に滑り込んだ私。
 事情を説明して保護してもらう。

 この時、王国側は獣人連合軍への対応を決めあぐねていた。
 獣人連合軍の詳細が不明なので情報を集めようと奔走していた時期だ。

 ジャグナー要塞は堅牢であり、たとえ相手が10万でも長期にわたって対応できると信じており、その間は折をみて援助を繰り返し、粘ってもらって充分な情報を集めようとしていたようだ。

 まさか別動隊によってラヴォールのクリスタル施設を急襲されるのは予想外。

 私が滑り込んできてから、各地各所の諜報員が呼び出されて、情報がかき集められジャグナー要塞がかなり危ない状態、ラヴォールに至っては壊滅した旨が確認された。

 急遽集められたサンドリア王立騎士団。
 これからジャグナー要塞を救うべく、出兵となる。

 ジャグナー要塞へ向かう途中にあるラテーヌ高原にて獣人連合軍が布陣していることが確認されている。
 規模は結構大きいらしい。

 ラテーヌ高原を迂回してジャグナー要塞へ行くこともできたが、今回の出兵はほぼ全軍である。それがジャグナーに行ってしまうと、ラテーヌ高原の獣人連合軍が直接王国へと攻め込めてしまう。

 今後の防衛を考えたら、ラテーヌ高原にて獣人連合軍を撃破し、その余勢を駆ってジャグナー要塞を救う。
 それが良いと判断したようだ。

 なんかラテーヌで長引きそうな予感がするんだけどなぁ。

 私はいろいろ取調べに近い事情聴取を済ませたあと、サンドリア王国のちょこパママ団支店に転がり込んでいる。 
 そして今もジャグナー要塞で頑張っているであろう、ちょこパママ団の団員に、私の現況を伝える為の準備をしていた。

 私の無事というより、クリスタルの無事を伝えたい。

 誰かが死んだ時に、死体が残らず粒子となって消えてくれるから、クリスタルの無事は察せるかと思うけれど、クリスタルが常に壊されるかもしれないって懸念を抱えながら戦うのはストレスがマッハだろう。

 ちょこパママ団サンドリア支店配属の諜報系特殊部隊「シュガースポット」に情報を送らせるかを考えたが、道中の敵を掻い潜るリスクを考えると、どう考えても空が飛べてチート能力を持っている私が行く方が早い。

 サンドリア王国軍が出兵した後、私もジャグナー要塞に向かう予定である。
 ラテーヌ高原を通らない迂回路から。

 その前にサンドリア王国軍を眺めながら、スイーツとコーヒーでお茶会をキメていたわけですよ。
 金運アップが見込めるという王国式ティーセットは実にお優雅ですな!

 遥々来たぜサンドリア。そしてさようならサンドリア。また逢う日まで。


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