第9話「ベルフリー」 |
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なんかおかしくない? 私のファイジャ(範囲火炎魔法)がバタリア砦の物資搬入口と思われる場所を破壊するのを合図に戦闘が開始され、スペルキャスター系の傭兵による攻撃魔法の釣る瓶打ちが始まり、バタリア砦は光や爆炎で見えなくなるほどになった。 その後、私の無限MPで上位魔法をこれでもかと叩き込んだ。 これでだいたい勝負は決するはず。 突然の襲撃を受けて指揮系統の混乱、追ってくる敵兵は三々五々にまばらな追跡。 それをこちらの傭兵が適切に処理しながら、安全に退却。 そのつもりだった。 ところが、あれだけ攻撃魔法を叩き込んだバタリア砦は無傷。 半壊しててもおかしくないのに壁に傷一つない。 なにか無敵モードなのかと思ったが、敵兵の死体がゴロゴロしているところを見ると、そういうわけでもなさそう。 ただ、あれほど敵兵の死体の山があるというのに、最初に測定した広域スキャン魔法の反応と今の反応にそんなに差がない。 獣人連合軍は体勢を立て直し、編隊を組んでこちらに突撃してきた。 こうなってくると話が違う。 雑に撤退するとこちらが壊滅する。 ちゃんとした迎撃の形で対応しつつ後退しなければ。 予想外にガッツリとした戦闘になってしまったが、ちょこパママ団の戦闘系特殊部隊「スイートスポット」の面々に守られつつ戦っているのでなんとかなっている。 この「スイートスポット」のメンバーは、ゲームで言うところの「廃人様」連中だ。 そう聞けばなるほどそれは安心だねって思えるだろう。 分からないって人は、まあ、漫画の主人公クラスの面々が集まってできた集団と思ってくださいな。 私は守ってもらいつつ、砦への範囲攻撃魔法を続けた。 どう考えても、敵兵の数がおかしい。 狭いところから人がどんどん沸いてくるコントのような状態だ。 なにか絶対からくりがあるのだろうと思い、広域スキャン魔法を走らせ、不自然なところを探る。 すると、バタリア砦の三階部分にて生物反応が次々沸いてくるのが見えた。 空を飛べる私は、マナウォールを張って突撃する。 とりあえず、この不思議な現象の正体だけでも掴んで情報を持ち帰らないと。 FINAL FANTASY XIがオンラインゲームであるため、本物の戦争は表現できない。オンラインゲーム用のシステムが適用されており、それをカンパニエバトル、通称「カンパニエ」と呼ばれていた。 塔の三階に空から飛びこむと、そこには、私がカンパニエでときおり目にした設備が鎮座ましましていた。 「Confederate Belfry」 ベルフリーと呼ばれる設備だ。 ゲーム内では、この設備から敵が無限沸きする。 もちろん自軍側のベルフリーもあり、味方の兵士が無限沸きする。 要は他所から兵員をワープさせる装置だ。 私はこの世界はゲームと違ってワープ系のアイテムや魔法は無いと思っていたのでちょっと唖然としてしまった。 気を取り直して、上級魔法をガンガン叩き込んで、部屋内の敵兵やベルフリーの破壊を敢行する。 敵兵たちはこの場所は絶対に安全と思っていたらしく、不意を突かれた形になって攻撃は容易に通った。 兵員を消し炭にした後、ベルフリーを破壊。 思いのほかベルフリーは硬く、敵の援軍が駆けつけてしまうとエライ焦った。 ゲームではもっと脆かった気がするんだけども。 私のチートな力でこれくらい時間が掛かるとしたら、普通だと結構かかるだろう。 とかく砦の三階の窓から飛び立つと、ベルフリーが破壊されたことが原因なのか、撤退する傭兵を追撃していた部隊が引き上げ、砦の守備に移行した。 傭兵たちも迎撃撤退ではなく、逃走撤退を開始。 去り際に上級魔法の1つ2つ放つと、あれほど頑強だった砦の壁が崩れた。 逃走中は気にする余裕は無かったが、今思えばどうして崩れたのだろうか。 とりあえず、今日あった事はすべて報告に入れておこう。 この情報をどうするかは上の判断次第だ。 攪乱作戦は成功として終了した。 ベルフリーの話を報告し、今後どうなるかを見守る。 そういえば、ゲームでは自軍側のベルフリーは「Allied Belfry」とか「Allied Armored Belfry」とか呼ばれていて、「Allied」は連合軍って意味だ。 実は現時点でアルタナ連合軍は結成されていない。 アルタナ連合軍はゲームでは人間側の各国の軍の軍指揮系統を暫定的に統合した軍隊。 ジュノの大公様、カムラナートの呼びかけで人間たちの国の代表たちによる会議、ル・ルデ会談が開かれ、そこでアルタナ連合軍が結成される運びだったはず。 連合軍が作ったアイテムがジュノに関わる事が多いので、ベルフリーについても何か分かるかもしれない。 ベルフリーの事はジュノの人が分かるかもしれませんよっと、追加報告しておいた。 普通なら傭兵の政治的な助言など優先順位が低いだろうけど、ちょこパママ団は今回のバタリア砦のことやら、いろいろな面で情報を持ってきているので「まぁ、キミたちが言うなら」という感じに、ジュノへの報告もすることになったようだ。 いやぁ。信用第一。 自分たちが楽になるように情報はガンガン報告したい。 ただ、ちょこパママ団が強大になり過ぎて危険視されて消されるハメになるのは避けたいところ。 加減を見極めたい。 というか薄々感じていたのですが、ゲームでは各国の一部隊が担当している傭兵が集まった組織、ちょこパママ団が引き受けてないか? あんまり政治的な綱渡りとかやりたくないのですがー! |
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